そういう笑顔をこれから先ずっとしていて欲しいと心から願った
甘い時間-まだ見えない未来に託す願い-
「やっと割れたぁ」
今にも挫折してしまいそうな声が静かな部屋に響き渡る。
「もう出来たのか?」
「まだチョコが割れただけ」
「フン、精精頑張れよ」
「というか、何でサスケがあたしの家にいるの?しかも、こんな日に」
今日はまあ世でいうバレンタインデー。
普通は女の子が唯一気持ちを伝えられる日。
彼氏のいるあたしには関係無いことだけど何となく作ってる。
一応、サスケにあげようと思ったのに生憎何故か家にいる。
やっぱり作ってる所は見られたくない。
「そろそろ散歩でも行ってきたら?」
だから、さっきから何度も家から出そうと試みている。
「別にいいだろが、家にいるくらい」
その言葉を言われたら言い返すことは出来ない。
「それとも、作られるの見られたくないとか?」
ニヤニヤと試すような表情でサスケは言った。
「そんな事無いからさ」
不自然な動きで鋭いサスケの言葉をかわす。
「なら、いいだろ」
ずっとこんな会話の繰り返しが続いていた。
あまりにも静か過ぎて何か喋ってみる。
「サスケはチョコレート好き?」
「それって誘ってるのか?」
「何それ」
「それより、無駄口たたいてないで早く溶かせろ」
いつも意味は無く二言めには攻めてくるサスケ。
でも、今日はやけに表情からして必死に理性を保とうとしているのがわかる。
何考えてるかわからなくてある意味で怖い。
「えーっとッ」
レシピを見ながらチョコレートを溶かしていく。
それと同時に空気がだんだん変わっていく。
「いい匂いだな」
思わず顔が緩むような甘い雰囲気。
「なかなかでしょ」
ちょっぴり得意げに自慢してくる。
憎たらしくもなるような可愛らしい表情は触ると壊れてしまいそうで
それでも、オレは触れることを求めてしまう。
理性なんてどうでもよくなってきた。
「こんなのかよ」
突然耳元で言葉を落とす。
「え…ッ」
さっきまで目の前にいたサスケがすぐ後ろにいる。
あまりにも速すぎて反応がついていかない。
「何でここにいるの?」
後ろに微かでも呼吸の音を感じる。
「理由なんていらないだろ?」
絶対に答えの見つかりそうに無い問いをわざわざ問いかけてくる。
「そうですね」
これも一種のイジメ。
「も同じようにとかしてやろうか?」
と溶けかけているチョコレートに目線をやりながら言う。
「お好きにどうぞ」
こんなサスケに抵抗する方が無駄になる事をわかってるからこその返答。
あたしの頬に手をかける。
そして、言葉も無く、
静かに口づけを落とす。
今のこの気持ちを忘れたくない。
微かな動きでも忘れたくない。
でも、こんな些細な時間もサスケを見ていられないのも苦しくて
最中に一度だけ瞼をゆっくり開いてみる。
こんなに近くてもまだ遠く思えてそれにいつもより愛しくも思える。
この想いを言葉で伝えたくて
ゆっくりサスケから離れる。
「…好き、好きだからね」
「今さら何だよ」
「いつだって言うよ、好き、好き…愛してるから」
サスケは言葉に決して表さない。
返事はいつも決まって態度で示される。
唇に触れるだけのキス。
軽くても一つ一つのサスケの行動があたしにとって大切なモノになる。
ゆっくりと二人は離れる。
それでも、確実に二人の間は縮まった。
「じゃ、頑張って作ります」
「食べれるまで待ってやる」
「なら、腕によりをかけて作らなきゃね」
腕まくりをしながら微笑んで言った。
またそういう笑顔するから
オレの理性に響いてくんだよ。
でも、いつもそんな顔をしていてほしいと心から願う。
この後もこの先の果てしなく遠い未来でも。
end.
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バレンタインデーフリー夢ですw
でも、お持ち帰りOKなんですが今回は報告必須ですので要注意!
BBS、メール、拍手なんでもいいです(・∀・)
あと、HPなどに載せる場合は著作権がありますので必ずリンクしてください
では、この文字は消してくださってもいいです
whiteberry 湊